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評者◆小嵐九八郎
大いなる論の渦巻くことを――柄谷行人著『ニュー・アソシエーショニスト宣言』(本体二四〇〇円、作品社)
No.3493 ・ 2021年04月24日




■おととしあたりから、地球温暖化がかなり身近で具体的になってきて、世界中で山火事が起きたり、夏は四十度を超す西欧の国国が現れたり、俺も夏はすっかり苦手となった。そこにコロナ禍で、貧しい新興国は医療体制も整わず、ワクチン入手もままならない情勢となってきた。日本では、第二次安倍内閣の2012年から19年の間に非正規労働者は350万人増え、次いでコロナ禍で失業が増加し、何だか暗過ぎる。
 そんな折「やれば何とかなる、向こうからもやってくる」の気分になれそうな一冊を読んだ。柄谷行人氏の本で『ニュー・アソシエーショニスト宣言』(作品社、本体2400円)がそれだ。
 前提としての経済政治分析は「生産様式」でなく「交換様式」からとしている。当方の乏しい知識でも、なるほどマルクスは『資本論』の第一部「資本の生産過程」は第一篇「商品と貨幣」から出発し、老いてもなお頭を痛める「使用価値」「交換価値」の価値論を展開している。「交換」が要だ。
 300ページほどの本を800字で要約するのは無理だし、失礼になろうから「NAM(ニュー・アソシエーショニスト宣言)」はたぶん10分で読めるけど、触りのプログラムを紹介しておきたい。但し、やっぱり、直に買って読むか、図書館で借りてじっくり読むのが正確だ。
 1.「倫理的経済的な運動」。「倫理的」っていうのが、今時、新鮮だ。
 2.「NAMは、外側で、非資本制的な生産と消費のアソシエーションを組織化し、内側で、資本への抵抗の場を流通(消費)過程におく。」
 3.「NAMは『非暴力的』暴力革命を否定するだけでなく、議会による国家権力の獲得と行使を志向しない」。うーん、ここがかつて新左翼の党派にいた当方は大いに懊悩し、なお踏ん張っている人人と折り合いが付くか難しいところ。
 4は、組織の形態が選挙だけでなく、おお、くじ引きを導入すること、5は、現実に拘ること。
 この宣言を元に大いなる論の渦巻くことを。







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