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評者◆秋竜山
ため息は 命を削る かんなかな、の巻
No.3470 ・ 2020年11月07日




■「癖」と、いうだけで落語をきいているような笑いがある。つまり、人間そのものであるからだ。昔、大政治家が、「私は嘘を申しません」と、いい放った。その一言で、大嘘つきであることを自分で暴露してしまったことになり、笑いものになってしまったということがあった。癖も、そのようなものである。「私は癖はありません」と、いうことは、その逆のことをいっていることになるのである。だからといって、わざわざ、自分には癖はないなどという人もいないだろう。そして、自分の癖は自分にはわからないものである。竹内一郎『やっぱり見た目が9割』(新潮新書、本体七六〇円)では、
 〈親兄弟、夫婦といった関係でないと、癖はなかなか指摘してくれないものだ。また、年をとるにつれて、そういうことを忌憚無く言ってくれる人も減ってしまう。それだけに、機会を見つけて自分の癖について人に聞いてみることをお勧めしたい。もしも、そういうことを聞く相手がいない、という場合は、まずはそういう人をつくることをさらに強くお勧めしたい。〉(本書より)
 たしかに、そういうものかもしれない。自分には自分の癖はわからないものである。
 〈癖の発生源の一つはストレスである。「それをやることで、心を落ち着かせている」のである。しかし、落ち着くのはもっぱら本人のみだ。極度の貧乏ゆすりやパソコンのエンター・キーを強く叩く癖などは、職場の雰囲気を悪くする。〉(本書より)
 誰でも一度は経験があると思うが、映画館で隣に座っている客が、ひどい貧乏ゆすりをする。カタカタ……と、その音と動きがこっちに伝わってくる。もう映画を観るような状況ではない。その内にやめるかと思っていたら、やめるどころか、ますますひどくなる。こういう場合、注意するのもかなりの勇気がいるものだ。自分がその場を立ち去るしかないか。それもくやしい。どうしたらよいのか。私は考えた。自分の隣の相手と同じように、貧乏ゆすりを始めたのである。こーなったら負けてたまるか。しばらくこの状態が続いた。戦いである。すると、隣の貧乏ゆすりが止んだのである。「しめた」と思った。ところが、今度は、こっちの自分の方の貧乏ゆすりがとまらなくなってしまったのである。
 〈さて、癖で、他人に嫌がられるものは大別すれば二種類である。「音」に関するものと「動き」に関するものだ。「その癖、嫌われます」(幻冬舎新書)という本を書くにあたって、何が気になるかあちこちでアンケート調査をしたことがある。だから私は「嫌われる癖」については詳しいつもりだ。(略)やっかいなのは「クチャクチャ音」や「ため息」のように、身体そのものから、音を発する癖。立つ、座る。電話を切る等々、ことあるごとにため息をつくような人がいると、周囲はげんなりする。(略)自分への戒めとして「ため息は命を削るかんなかな」という川柳を覚えておくとよいだろう。〉(本書より)
 食事しながら女房が、「あなた、そのクチャクチャと猫が食べるような音を立てるのをやめて頂だい!! それに、ああ、またため息をつく、いい加限にしてよ!!」「俺からその二つをとったら、食べた気はしないんだ」。食事のたンびに二人の会話が続く。この癖、どーしたらいいんだろう。シーンとした食卓。







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