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評者◆添田馨
現代権力論――権力悪を支えつづけるもの④
No.3451 ・ 2020年06月13日




■たとえ虫食いで中身が腐っていようが、その実体が見掛け倒しの張りぼてであろうが、ある政権党派が権力の中枢に居座り続けるためには、それを支える不透明な集合意思と自堕落な構造とがかならずそこに関与している。
 内閣支持率(不支持率)は安倍政権がみずからの正統性を僭称するのに欠かせない空疎な指標だが、彼らはこの仕組みを悪用し、政策立案を社会的実効性に向けてではなく内閣支持率の維持向上のためにのみ方針化するようになった。およそ議会制民主主義の禁じ手にもかかわらず、こうした手法はあるていど成功してきた。この状況を一変させたのが今回のコロナ危機だった。
 特に思い付きの学校休業要請、実効性がみじんも感じられない布マスクの全戸配布、生存権を踏みにじる全国一律の緊急事態宣言とその恣意的な延長など、およそ国民生活を破壊しかねない泥縄的な愚策の連発は、まさに“無能”が国民に対して牙を剥いたカタストロフィックな事態だったと形容しうる。
 「やってる感」がこれまで内閣支持率を一定以上に繋ぎとめてきた実態はたしかにあった。だが市民生活上の危機が普遍的かつ深刻になるにつれ、このやり方はまったく通用しなくなった。やればやるほど、補償もないまま自粛だけを要請される市民側は、表立って口には出さないものの政権側に対する怨嗟の念を間違いなく募らせていた。内閣支持率の向上しか頭になかった官邸ブレーンには、この窮迫した困難に対処する具体策などもはや考えつきもしなかっただろう。せいぜい記者会見場の演壇にプロンプターを設置して、総理が原稿なしで演説している風を装うくらいのこと以外には。
 新型コロナウイルスの特徴は、オリジナルのDNAを持たないため自力では増殖できず、健康な宿主のDNAを盗用することで増殖をはかる点にある。その結果、侵入された宿主は重篤な症状に陥り、場合によっては死に至る。この姿は安倍官邸が政権運営を進めるまさにその写像である。
(つづく)







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