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評者◆伊達政保
「関ナマ」労働運動の評伝と映画――平林猛著『評伝 棘男――労働界のレジェンド武建一』(展望社・本体二〇〇〇円)
No.3431 ・ 2020年01月18日




■「カンナマ」「関ナマ」「関生」。多くの人が聞き慣れない言葉だろうと思うが、労働組合運動に関心がある人ならば、すぐさま関西を拠点に闘う原則的労働組合を思い起こすだろう。正式名称は全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部。労働組合が昔日の勢いを失い、ストライキどころか労働者の緒権利すら守ることが出来ない現在の「働き方改革」という名の労働現場再編の状況の中にあって、ストを打ち賃上げ労働条件の改善を勝ち取った労働組合なのだ。
 戦後労働運動の高揚は、産別労働組合によってもたらされたといっていいだろう。読売争議をはじめとする新聞放送単一労組の産別闘争などがそのいい例だ。それに懲りて国家や資本側は労働組合を企業別に再編していく。結局、労働組合は企業に包摂され、企業の代弁者のような連合など現在の労働運動の体たらくを招くことになったのだ。ちとはしょり過ぎたかな。
 「関ナマ」は生コン車運転手の個人加盟の産別(職能別)組合である。生物のコンクリートを工場から建設現場へ時間内に運ぶ過酷な仕事だ。知っての通りゼネコンは下請け孫受け体質である。「関ナマ」の使用者はほとんどが中小企業であり個別企業との闘争では共倒れになりかねない。そこで各企業が参加し元請けのゼネコンまで巻き込んだ集団団体交渉が採られ、賃上げ労働条件改善を勝ち取ってきた。そればかりか中小企業を協同組合にまとめ、ゼネコンからのをダンピング無しに受注するようにさせていった。また労働組合として経済闘争にとどまらず、安保や沖縄基地問題、反原発など政治闘争、思想闘争にも積極的に取り組む姿勢を示してきた。そして関西の建設業界は「関ナマ」が牛耳っているとまで言われるようになり、時の経団連大槻会長は「関ナマ」に箱根を越させるな!と厳命したほどだ。
 東京オリンピック、大阪万博を控え「関ナマ」労働運動に恐れをなした国家権力、大資本は、大弾圧を開始した。武建一委員長は5回の逮捕、現在も1年以上勾留中。延べ組合員77名、業者8名逮捕、起訴55名。罪名は組合要求が「恐喝、強要」となり、ストライキが「威力業務妨害」となるという、まさに労働運動、労働組合つぶしである。
 その「関ナマ」のリーダー武建一ドキュメンタリー本が刊行された。平林猛著『評伝 棘男‐‐労働界のレジェンド武建一』(展望社)だ。徳之島の生い立ちから労働組合の結成、現在の状況に至るまでを渾身の筆で描き出している。また並走したドキュメンタリー映画『棘 TOGE‐‐ひとの痛みは己の痛み。武建一』(杉浦弘子監督)がある。両者とも必読、必見だ。







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