書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります
評者◆黒古一夫
「日本語ブーム」の実状──中国から見た現代の日本に迫る、短期集中連載④
No.3086 ・ 2012年11月17日




 前回、私の勤める華中師範大学外国語学院(日本語科)の大学院生たちがどのような授業を受けているかの一端をお伝えしたが、日本語科の主任・李俄憲教授によれば、現在中国の大学(約1100校)のうち北京大学や精華大学など日本でもよく知られている国立(省立)大学を始め約500校に日本語科があり、約90万人の学生が日本語教育を受けているという。日本語教師は、約5万人(日本人教師を含む)で、彼らは専任の日本語教師が不足している大学でアルバイトを行い、給料の何倍かを稼いでいると言われている。
 この日本語科の隆盛は、英語科に次ぐもので、中国と日本との関係(特に、企業の中国進出、文化交流)を反映したものと言ってよく、日本語科を卒業した学生の多くは、その達者な日本語が重宝され、中国に進出している約2万社(一流企業の約6割)の日本企業やその関連企業に就職したいという希望を持っている。現に、院生3年のある学生は、学部を卒業して2年間日本企業に勤めて金を貯めた後、ステップアップを目指して大学院に進学してきたが、彼女は将来日本語の教師になるのが「夢」だという。
 かように「日本語ブーム」が続いている中国であるが、では大学において「日本文学」や「日本文化」がどれほどカリキュラムに組み入れられているかといえば、大学院に進学してきた各地の大学卒業生たちに聞くと、ほとんどが「概論」程度で、本格的な日本近現代文学に関する教育は受けてこなかったという。先の李俄憲教授によると、日本語教師の大部分は日本文学や日本文化を「専門」的に学んだ経験がなく、例えば大江健三郎や村上春樹といった現代作家についての翻訳者はたくさんいるのに、彼らについて「作家論」なり「作品論」を書いている研究者(専門家)は極端に少ないのが現実とのこと。これは、中国における日本文学に関する研究が、三、四〇年前のアメリカと同じように、「文学研究」よりも「翻訳・紹介」に重きを置く段階にあることを意味しており、別言すれば中国における日本近現代文学の研究は、現在まさに「発展途上」にあるということでもある。
(つづく)







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 なめらかな世界と、その敵
(伴名練)
2位 石川九楊自伝図録 わが書を語る
(石川九楊)
3位 罪の轍
(奥田英朗)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 一切なりゆき
(樹木希林)
2位 一人暮らし
わたしの孤独のたのしみ方
(曽野綾子)
3位 のっけから失礼します
(三浦しをん)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約