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評者◆秋竜山
たんなるウワサですが、の巻
No.3423 ・ 2019年11月16日




■声をひそめて話す。噂話の原則だろう。「ないしょ話」は相手の耳元へ、こっちの口を近づけて、ヒソヒソ話す。そのつど相手から「エ〓 今なんていったんだ」を、くりかえされると、ないしょ話にならなくなった。「他人に、絶対に話すなよ」は、「話せよ」と、いうことである。噂話は、そうしてひろまっていく。昔、〓噂を信じちゃいけないよ、どーにもとまらない。という歌が流行した。信じてはいけないと、思いつつも信じてしまうから、そこに心理のトリックがある。多湖輝『心理トリック――人を思いのままにあやつる心理法則』(ゴマブックス、本体一二〇〇円)。前号に続いて引用させていただきます。
 〈口から口に伝えられる情報は、内容の深刻度に応じて、誇張の度合いも大きくなる。〉(本書より)
 尾ひれがつくともいう。
 〈人は、情報を他人に伝達するさい、自分なりの主観的な意味づけをするからである。とりわけ、情報の内容が人間の生命、社会不安、天災など、深刻であればあるほど、正確さを欠き、誇張されやすい。情報の真偽をよく確かめないと、こうした心理トリックを悪用したデマや噂に踊らされることになる。〉(本書より)
 そして、デマに接した人びとの、じつに八五パーセントが、真実と思い込んだのであるという。デマとわかっていながらにして、そのデマにひっかかってしまう。まず、最初にデマが流されるわけであるから、その最初をつきとめようとして、誰がどのようにして流したのかわからない場合もあったりする。だまされるものが悪いとさえ思えてくるのである。
 〈口から口への情報が、いかに変容され、頼りないかをもっとも端的に示したのは、心理学者カール・メニンジャーが「人間の心理」の中で述べた実験結果である。AからJまでの奥さんが、順々に電話でキング夫人の噂話をしたのだが、健康なキング夫人が、最後には死んでしまっているのだ。〉〈A夫人からB夫人に、「キング夫人は、今日はどちらにお出掛けでしょうか。ご病気かしら」〉から、この噂話は始まるわけであるが、〈B夫人↓C夫人〉〈C夫人↓D夫人〉〈D夫人↓E夫人〉〈E夫人↓F夫人〉〈F夫人↓G夫人〉〈G夫人↓H夫人〉〈H夫人↓I夫人〉〈I夫人↓J夫人〉と、噂が噂を呼ぶようにしてひろまっていく。ひろまるつど、いい加限な噂となっていくのである。もし、自分が、その中に加わっていたなら、同じようにしていただろうと思う。「そんな、馬鹿な噂を信ずるか」とは、とてもいえないだろう。
 〈I夫人↓J夫人「キングさんのお葬式にいらっしゃいます?きのうおなくなりになったそうよ」〉〈J夫人↓キング夫人「私たったいま、あなたがおなくなりになって、お葬式だと聞きましたわ。いったい、だれがそんないやな噂を流したのかしら」〉
 噂話によって自分が亡くなっていることになっているということを知ることになるのである。「私はピンピンしているのに」。人を殺すには刃物もいらぬ、噂ひとつも流せばよい。と、いうことか。
 テレビのニュース番組で、アナウンサーが「只今のニュースはすべて噂によるものでした」と、つけ加えたとしたらどーなるのか。つまり、嘘だったということになる。ところが、それを嘘だと信じないのが噂の恐ろしさともいえるだろう。







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