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評者◆添田馨
日本国憲法の肖像――改憲論の変容と護憲⑤
No.3419 ・ 2019年10月19日




■「大日本帝国」が「日本国」に生まれ変わったとされるのは、敗戦を境にしてのことである。現在の憲法問題を考えるにあたって、私たちは日本国建国の原点が、世界戦争での敗北だったという歴史事実を受け入れるところから始めるべきではないのか。
 右派改憲勢力、特に日本会議などのイデオロギーに特徴的なのは、戦前の大日本帝国憲法(以下「帝国憲法」と略記)への回帰志向が顕著なことだ。このことは言外に、彼らが大日本帝国(日本国ではない)敗戦の事実を、意図的に回避するか封印するかして、少なくとも意識の上では受容していないことを物語る。
 であるならば、彼等がそれほど回帰を熱望する大日本帝国とは一体どのような政体だったのかが問われなければならないだろう。ひとことで言うなら、わが国の最後の大規模内戦だった戊辰戦争を勝ち抜いた政治勢力が、徳川幕藩体制を打倒したあとに打ち建てた新国家が、大日本帝国に他ならない。
 「大日本帝国」と「日本国」――このふたつの“日本”の性格を隔てている建国事情の違いは、それぞれの原点に、敵対権力との戦争での“勝利”が埋め込まれているか、あるいは“敗北”が埋め込まれているかということに尽きる。
 ふたつの国は、それぞれ自らの憲法を持っていたし、また現在も持っている。言うまでもなく、前者は帝国憲法を、また後者は日本国憲法(以下「現行憲法」と略記)を有している。しかし、両者の実質的な憲法制定権力は実はまったく異なる政治主体だった。帝国憲法は外国勢力と組んで旧体制を打ち破った薩長連合勢力であり、また現行憲法は戦後にGHQとしてこの国に君臨したアメリカを中心とした勢力である。乱暴な言い方だが、概ねこの構図で間違いはない。
 つまりこれら二つの憲法は、いずれも国家主権の存亡を賭けた大きな戦争の勝者の手によって「押し付けられて」きた過去を持つ。天皇主権か、国民主権かを問う以前に、こうした事実関係があることを、まずは確認しておきたい。
(つづく)







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