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評者◆伊達政保
日韓関係が緊張度を増す中、この題材を真っ向からぶつける上演はさすが――新宿梁山泊公演『烈々と燃え散りしあの花かんざしよ』(作・シライケイタ、演出・金守珍)
No.3415 ・ 2019年09月14日




■今年、日本でも公開された韓国映画『金子文子と朴烈』、同じ題材を扱った芝居が上演された。新宿梁山泊『烈々と燃え散りしあの花かんざしよ』(作・シライケイタ、演出・金守珍)だ。シライ主催の温泉ドラゴンが2015年に上演した作品の再演だという。映画の韓国での公開が2017年だから、それに先んじた作品なのだが、オイラも映画を受けたものだと誤解していた。
 関東大震災前、無政府主義者の朴烈は朝鮮独立運動の不逞社を結成、彼に共鳴した金子文子はそれに加わる。震災直後、朝鮮人襲撃から守るとの名目で、二人は保護検束、爆弾を準備しようとし皇太子暗殺を計画したとの供述から大逆罪で死刑判決。恩赦により無期懲役となるも二人は減刑を拒否し、文子は溢死する。朴烈は生きて敗戦後釈放されるが、それは別の話だ。
 従軍慰安婦、徴用工問題に端を発し日韓関係が刻々と緊張度を増す中、この題材を真っ向からぶつける芝居を上演するとはさすがだ。そもそも大日本帝国による朝鮮侵略の戦後保証を含む1965年の日韓条約に問題があるのだ。当時、日韓双方で条約反対闘争が取り組まれたことも、条約内容も結ばれた状況もよく知らないまま論じあっている。日頃はリべラルな見解を持ち、安倍政権の政策を批判する人の中にも、こと日韓の問題となると上から目線で韓国批判を行う。マスコミもそれを煽り立てる。やはり日本人の中に朝鮮差別が色濃く残っており、現在の韓国の国勢に対する嫉妬が、それに輪を掛けているとしか思えない。おっと話が逸れた。芝居に戻ろう。
 舞台は水嶋カンナ演じる金子文子の法廷陳述から始まる。確信犯的過剰供述とも言われるその言動を水嶋がよく表現していた。文子の家族破綻による極度の貧困の生い立ちを絡め、欲しかった花かんざしを母親に買ってもらうが、幼い娘を着飾らせ女郎屋に売るためだったという、劇題の基となるエピソード(事実)には泣かされた。不逞社内の大言壮語や嫉妬、疑心暗鬼など、運動でよくある話だと経験上納得させられる。ふと思ったのだが、なぜ爆弾の「入手」にこだわったのだろう。知識のある二人なら製造出来ただろうに。オイラの友人の男女二人は爆弾を自前で製造、極力人的被害を出さないようにして企業爆破を遂行、男は逮捕時に服毒自殺。東アジア反日武装戦線「大地の牙」である。舞台の最後、恩赦を拒否し溢死する金子文子のシーンに、虚無主義の極北を見る思いがした。
 アリャ! 今の日韓の対立を煽るマスコミと取り巻く状況を、何処かで読んだ気が。54年前、日韓条約時に発表された筒井康隆最初の長編小説『48億の妄想』。妄想が現実化したのだ。







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