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評者◆秋竜山
芸術クソくらえ、の巻
No.3391 ・ 2019年03月16日




■岡本太郎の芸術話は面白い。一貫して、「芸術クソくらえ」であるからだ。まったくブレないのである。芸術とか芸術家に、うらみつらみでもあるのだろうか、と思えてきたりする。同じことばかりいっている。それもそのはずだ。私は岡本太郎ファンであるから、岡本太郎の本をよく読む。それも、同じところばかりである。芸術クソくらえのところばかりであるから、活字の場合はブレることはない。だから、同じところを読んだぶんだけ、ブレないということになる。昨日いったことと、今日いったことと違うということはない。だから、本が好きである。
 岡本太郎『自分の中に孤独を抱け』(青春文庫、本体七二〇円)で〈人間がいちばん人間的なのは、孤独であるときなんだ。〉と、いう。自分が本当に孤独におちいった時、自分は今、人間的なんだ。と、思えばいいということか。人間はいつも人間的であるだろう。いつも孤独である。実際に孤独というものはどーなんだろうか。アー、いやだ。いやだ。孤独なんて、いやだ!! と、いうことは、アアー、いやだ。いやだ。人間なんて、いやだ!! なんて。俺は、今孤独ではない……と、いうことは。人間的ではない!! なんて。
 〈絵の技術についての考え方が根本的にまちがっているんだ。それを一言で言い表したのが、「芸術はうまくあってはいけない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」という三原則だ。芸術が「職人的うまさをもっていなければ芸術ではない」という考えに支配されているからこそ、描いたものが不手際ならけしていい気持ちがしないし、そのためにつくる意欲さえ失ってしまう。〉(本書より)
 これは岡本太郎の芸術話の中で、彼のいい分として、まったくブレないのである。私がそう感じるのは、私が岡本太郎本のその部分をよく読むということだ。
 〈こどもの絵はけっしてうまくはないし、きれいでもないけれど、なにか微笑ましく、こちらの気持ちを打つ。こどもたちが、うまく描いてやろうとか、心地いいものをつくろうなんてオテイサイを考えていないからだ。素っ裸な心、魂がそのままわき出ているから楽しい。〉(本書より)
 子供の描いた絵を見て、大人にはまったく描けないと思う。子供の時、学校の授業での外へ出ての写生をしていたら、通りかかった人が、「きみ、その木をよく見てごらん。きみは左へ曲がって描いてあるけど、もう一度よく見てごらん。右へ曲がっているだろう」と、いわれた。よく見ると、その人のいうように木は右へ曲がっていた。うん、たしかに右だ。子供は、自分が間違って左へ曲がって木を描いた。そして、その人のいう通りの右へ曲がっている木に描きかえた。その人は「ウン、そーだろう。それでいいんだろう」と、いって立ち去ったのである。子供は、その人が遠くへ立ち去るのをみて、いそいで今、なおしたばかりの木を、はじめの通りに右へ曲げて描き直したのであった。そして、「これでヨシ」と、いった。これは実際にあったことである。岡本太郎さんはなんていうだろうか。「きみが正しい」と、いうか……な。







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