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評者◆増田幸弘
「棄民社会」の象徴――放射能について、福島について、正しい知識や情報をいまだもっていない
No.3391 ・ 2019年03月16日




■原子力は科学でありながら、非科学的で、宗教に近い

 あの日から、福島のことが心にこびりついていた。日本を離れて暮らし、なにがどうなっているのか、本当のところがどうにも判然としなかったのもある。義妹が原発事故から一〇カ月後、脳幹出血で亡くなったのもある。まだ四〇代だった。弟が仕事から帰宅したところ、嘔吐して倒れた義妹の傍らで、幼子が無邪気に遊んでいた。原発から距離のある埼玉に住み、「ただちに影響はない」と国に言われたところで、小さな子どもを抱える彼女は放射能を極度に怖れた。空気が家に入らないよう、窓という窓を目張りするほどだった。「放射脳」と笑われるかもしれない。しかし、広島と長崎に投下された原子爆弾や、社会主義時代のソ連で起きたチェルノブイリ原発事故について、放射能の怖さを掻き立てる報道が長らくつづいたのだから、福島はちがうとの単純な説明には無理がある。放射能の雨が降り、濡れたら被曝するとささやかれた。不安を抱えた義妹は、相当なストレスを溜め込んでいたと聞く。因果関係はわからない。震災関連死に数えられているわけでもない。時が経つにつれて生きた心地のしなかった記憶がいつしか薄れ、「病気で亡くなった」と気持ちに折り合いをつけているのにも気づく。ぼくに限らず、3・11をめぐって...







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