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評者◆秋竜山
無人島マンガ人間化する日本人、の巻
No.3379 ・ 2018年12月15日




■山﨑武也『「孤独」はつくって愉しむもの――この「贅沢時間」の過ごし方』(三笠書房知的生きかた文庫、本体650円)では、意をえたり。無人島マンガ、あるいは孤島マンガとも呼ぶが。これは世界的なマンガの一つのテーマであり分野である。マンガとなると、ナンセンス・マンガとなるだろう。無人島マンガがどのようなものであるか、有名であり過ぎるから説明するまでもなかろう。なぜ、みんな無人島マンガが好きであるのだろうか、という説明もあえてすることもない。現実的無人島といったら、ロビンソン・クルーソーであるが、それを突きつめると漫画の、一人のれるかほどの小さな島にヤシの木が一本という無人島になる。「あなたは、無人島へ行くとしたら……」と、いうと無人島マンガの無人島へ行くとしたら、ということになる。そんな島へ行けるとしたら、ということは、自分がマンガの人間になったら、ということになるだろう。自分をマンガ化させるのが、人間がいかに知的動物であるかがわかるというものだ。みんな無人島にあこがれるのは、独りになりたいからである。のがれたいからだ。人間社会からである。文明社会から逃げ出して、独りになりたいということだろう。こんなことを説明するまでもあるまい。
 〈人々が大勢いる喧噪の中のほうが創作活動にいい、という人もいる。だがその場合や周囲の騒がしさを「無機質」なものとして感じとっているので、それ自体が一種の「壁」となっている。有機的なものを遮断する「エアカーテン」にも似た働きをしているのである。群集の中の孤独が実現されている場合なのだ。〉(本書より)
 外国のことはよくわからないが、今、日本人は無人島の住人になったような時間の中にいる。
 〈最近は大多数の人が携帯電話やその派生製品であるスマートフォンの類いに見入っている。情報を取ったりチェックしたり、さらに交信したりゲームに興じたりするのに忙しそうだ。乗り物の中にいて静止しているときだけではなく、歩いているとき、すなわち自分が移動しているときでも、その行為をやめようとはしない。まさに、ネットにうつつを抜かしている。〉(本書より)
 いずれにしても、世はネット時代である。と、本書では述べているが、ネットに興じているヒトは、無人島マンガにおけるマンガ人間の姿そのものである。スマホをしている人に、ちょっとでも話しかけたりすると、「うるさい!!」といわんばかりの顔でにらみかえしてくる。うっかり話しかけたりできない世の中になってしまったのである。スマホなんてものがあるからだ!! と、スマホのせいにするわけにもいかんだろう。ネットにはまることは、
 〈結局は、孤独を紛らわせる作業に没頭する結果になっている。多くの人たちとネットでつながれば、仲間意識を味わう機会が多くなり、それだけ寂しくはない。〉(本書より)
 ますます、無人島マンガ人間になっていく。一人一人が小さな無人島をつくりその島の住人となっている。ヤシの木が一本。かつては無人島マンガといえば、そこへ漂着した人が、水平線にむかって、「オーイ、助けてくれー」と、叫んだものであったが、今、その言葉を発したとしたら、何の意味を求めているのだろうか。







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