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評者◆伊達政保
一人一人の胸の奥にある小さな火を燃やせ、援軍はあなたたち――演劇集団風煉ダンスの『まつろわぬ民2017』
No.3314 ・ 2017年08月05日




■表現者が現在のこの情況の中で、何を表現しなければならないかを、しっかり表現した作品を観た。演劇集団風煉ダンスの『まつろわぬ民2017』作・演出・林周一、音楽・演奏・辰巳小五郎、関根真理、ファン・テイル、出演・白崎映美、伊藤ヨタロウ他(座・高円寺、いわきアリオス、山形・シベールアリーナ)だ。
 2011年、東日本大震災と福島原発事故被害に接し、東北出身である歌姫・白崎映美は木村友祐の小説『イサの氾濫』に触発され、東北を勇気づけようと「まづろわぬ民」を作詞作曲して歌い続けてきた。「まつろわぬ民」とは、古代ミカド権力にあらがい迎合しない東北の蝦夷(エミシ)を指している。彼女の歌に想を得て2014年に製作・上演された『まつろわぬ民』が、今年再演となったのだ。
 今回は伊藤ヨタロウが狂言回しの役を担い、歌も披露する。舞台は一人の老婆胆沢スエ(白崎)が住む黒いゴミ袋であふれ返る一軒のゴミ屋敷。行政によるゴミ撤去の代執行が行われようとしている。「ゴミでねえ」と歌うスエと登場者のダンスと生演奏の劇伴は正に音楽劇。そして突然ゴミたちの百鬼夜行。ゴミたちには千年前ミカドに滅ぼされたエミシの鬼一族が取り付いていたのだ。初演ではスエの鬼姫と族長サンベの悲恋を軸としていたが、今回は息子サンべを待つ鬼姫と設定変更。冷蔵庫、ピアノ、アイロン、コタツ、テレビ、赤電話にもそれぞれ鬼が取り付いていた。加えて少年ジャンプに取り付いた戊辰戦争で落城の憂き目に遭った武士の魂。古代から現代まで歴史を往還して抵抗の物語は展開する。
 また福島の帰還困難地域から避難してきたと思われる、認知症の母親とその家族のス卜ーリーも絡まる。母親がゴミの中から見つけた、昔、自分が眼帯を張り付けた人形との出会い。人形が見続けた半分の世界、人形が眼帯をむしり取り見た現在の全部の世界とは。黒いゴミ袋が除染後のフレコンバッグに見えてくる。シリアスなテーマを提示しつつ、アクションやスぺクタクル満載、所々にコン卜風のコミカルな場面や、ゴミ撒去の作業者、坂上、田村、丸尾の名を合わせれば坂上田村麻呂とテーマに沿った駄ジャレも交える。
 ラス卜の作業員や役人の独白に、事実を見ないようにしてきたことヘの後悔、沖縄辺野古で座り込み、機動隊に排除される彼の母親の姿が浮ぶ。権力がいかに大きくとも私たちはまつろわぬ民であり闘い続ける、一人一人の胸の奥にある小さな火を燃やせ、援軍はあなたたち、圧倒的な白崎映美の歌声は全人民蜂起を呼び掛けるアジテーションのようだ。このラストにオイラは泣いた。東北公演でも多くの観客は涙していた。







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