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評者◆小嵐九八郎
短歌の音律性の重大性――笹公人著『ハナモゲラ和歌の誘惑』(本体一三〇〇円、小学館)
No.3311 ・ 2017年07月15日




■歌人と自称している。短歌を作るようになったのは四十歳が見えてきた頃の刑務所の中だ。舎房の修理にきた手拭いで頬被りした五十代と映った女性たちに“感動”したこと、夏の単純労働を過酷に強いる“懲役”のおかしさを“訴え”て“哭く”ゆえに。それまでは、作業中に頭の中で俳句を作っていたのだが、どうも、この“感動”“訴え”“哭く”には言葉があまりに不足している。七七が欲しかった。
 娑婆に出てきて、活動と短歌を両立させようとしたけれど、いつもいつも“感動”“訴え”“哭く”ばかりしていられない。そもそも飯を食うのに困るので、小説を書きだした。
 それでも短歌の持つロマン、響き、約束ごとがあるゆえの潔さ、直でないからこそずんとくる思想性は俺の躯や心の中で渦巻くし、寺山修司、塚本邦雄、福島泰樹氏、道浦母都子氏らの歌は要のところで「待てえ」「止まれえ」「行けえ」としがみついてくる。「最近の短歌の傾向は解っているか?」「おのれの短歌の駄目な点は韻律の響きの無さと喋り言葉へのセンスの無さだけか?」など、今の今の歌について解っていないので、けっこうマジに苦しむ。
 こういうテーマにかなり答えている論の本が、出ている。笹公人さんの『ハナモゲラ和歌の誘惑』(小学館、本体1300円)である。
 ハナモゲラ語とは1970年代半ばから80年代初頭にコピーライターやジャズピアニストの中で流行った言葉遊びであると言う。先駆的かつ爆発的に知られ、後に岡井隆氏によって「リズムと音韻と意味」が鬩ぎ合う短歌とされた亡き大橋巨泉の《みじかびのきゃぷりきとればすぎちょびれすぎかきすらのはっぱふみふみ》のCMなどを笹公人さんは分析し、短歌の音律性の重大性を展開している。斎藤茂吉の《信濃川――》の歌の不滅性の謎をも知らせてくれる。
 万葉時代と重なるであろうその前の神代の日本語の消せるわけのない母音の占める凄み、果てに現代の話し言葉の果敢無さというか限界も。
 ふふっ、か、ほお、か「超常現象」の短歌の秀歌のほとんども知ることができますぜい。






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