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評者◆殿島三紀
公人を全うしたファーストレディ――パブロ・ラライン監督『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』
No.3298 ・ 2017年04月08日




■『日本と再生 光と風のギガワット作戦』『ラビング 愛という名のふたり』『わたしは、ダニエル・ブレイク』『未来よ こんにちは』を観た。
 『日本と再生』。監督は20年にわたって原発の危険性を訴え、全国で原発差し止め訴訟を行ってきた弁護士の河合弘之。監督作品としては本作が3作目である。前2作で原発の危険性をこれでもか、と描きぬいた監督だが、今回は世界と日本の自然エネルギーの実情を見せてくれる。日本は太陽も水も風も地熱もバイオマスもいっぱいある資源大国だった。希望を与えてくれる作品だ。
 『ラビング』。監督・脚本はジェフ・ニコルズ。舞台は1950年代のバージニア州。当時アメリカの幾つかの州では異人種間の結婚が禁じられていた。バージニア州もその一つ。物語は白人と黒人の夫婦であるという理由で逮捕されたラビング夫妻が、約20年かけて最高裁で異人種間結婚禁止法の違憲判決を勝ち取るまでを描く。夫婦の純朴な愛に涙すると同時に、アメリカの自由と人権の確立は案外最近のことなのかと実感させられた。
 『わたしは、ダニエル・ブレイク』。前作『ジミー、野を駆ける伝説』(2014)で映画監督を辞めるつもりでいたが、どうしても撮らなくてはいけないと引退宣言を取り下げてまで撮ったケン・ローチの最新作。死に物狂いで助けを求める人に対して、国はわざわざ煩雑な手続きを用意し、「仕事をみつけないなら苦しめ」と言わんばかりのことをする。それを目の当たりにした怒りが本作を作る原動力になった。監督の怒りに感謝。感動作だ。
 『未来よ こんにちは』。監督・脚本はミア・ハンセン=ラブ。パリの高校で哲学を教える50代後半の女性が主人公。哲学書を執筆し、夫も哲学教師。二人の子どもは独立。高齢の母の世話をしながらも充実した日々を送っていた彼女。ところが、バカンスを前に突然の離婚宣告、更に母は死に、出版社から次回の出版はないと言われ、目をかけていた教え子にも去られた。彼女は人生の秋に一人佇むしかないのか……。
 今回紹介するのは『ジャッキー』。就任後わずか2年数か月で凶弾に斃れたケネディ大統領が今も輝くのは、ジャクリーン・ケネディことジャッキーの奮闘の成果であるというコンセプトの作品。と、ちょっと引き気味なのは、パレード中の大統領が狙撃されるというあの世紀の衛星放送をこの目で見てしまったからだ。1963年、日本では11月23日早朝に、放送史上画期的な実験としてテレビ初の日米宇宙中継が行われた。この歴史的な電波に乗って送られてきたのがケネディ大統領暗殺の悲報だった。目に飛び込んできたのは、オープンカーに乗っていた大統領が倒れる様子。だが、この目に灼きついてしまったのは銃撃後、車のトランクの方へ這って逃げていくジャクリーン夫人の姿だ――。
 しかし、幼いジョンJr.やキャロラインが父の棺を見送ったあの情景は今も鮮明である。後年、北爆を開始したのがケネディだったということを知っても、未だ素晴らしい大統領だと思えるのはやはり誰かの努力があったからだし、その努力は一番身近な夫人が行ったと考えるのが妥当なのだろう。映画はジャッキーが大統領の返り血を浴びたピンクのシャネルを脱がないまま、大統領機の中でジョンソン副大統領の大統領就任宣誓に立ち会う姿や、ホワイトハウスの模様替えを行うジョンソン夫人を悔し気にみつめる様子が描かれる。圧巻は夫の葬列をリンカーン大統領と同じように行うのだと言い張るシーン。
 そうだ。大統領は死してもなお公人なのだ。そして彼の名誉を守るのはやはり公人である未亡人なのだ。いつまでも幼い日のトラウマにひきずられるのは止めようと思わせてくれた作品である。パブロ・ラライン監督作品。
(フリーライター)






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