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評者◆小嵐九八郎
九条議論のテキストに絶好だ――柄谷行人著『憲法の無意識』(本体七六〇円、岩波新書)
No.3269 ・ 2016年09月03日




■当方が学生運動に走ったのは一九六六年の学費値上げと学生会館の管理運営を巡る“学園闘争”がきっかけだ。それから、ベトナム反戦の政治的課題と結びつき、一九六八年の新宿での騒乱罪の適用、一九六九年の東大安田講堂決戦と、中核派・社学同・社青同解放派の三派系とノンセクト・ラジカルの学生運動はピークを迎えた。後は、内ゲバでの累累たる屍の積み上げと吐息が出てしまう……が。
 それで、俺達の先輩は「『護憲か、改憲阻止か』でいろんな論争があった」と教えてくれたが、「現憲法は、天皇制と私有財産の点で問題があるが『改憲阻止』だよ」と語っていた。ま、当時の社会主義や共産主義を目差す者には当たり前にも映った。
 しかし、大老人になって先は骨と灰の身が待つとなると、日本一国の人の世界の人人の苦しみを知らぬ楽天主義の気配は濃いとしても、やはり、九条の「戦争の放棄」は戦争に行かずに済んだ、朝鮮戦争やベトナム戦争や湾岸戦争やイラクの問題に巻き込まれて命を落とさずにこれたという疚しいような、逆に、得をしたような気分になる。これからの青少年や赤子の将来を考えると、やはり、九条は命懸けほどに大切だ。
 九条を巡り、ナショナリズムと屁理屈で骨抜きにしていくことがこの数年、かなり激しく、厳しい。その折、当方の畏怖する柄谷行人氏が『憲法の無意識』(岩波新書、本体760円)を出し、御存知の通り、かなり話題になっている。当方の周りの骨抜きにされて久しい老人達の間でも、この本の中身で喧嘩をしたり、アルバイト先の大学生の間でもいっちょ前に論争が起きている。
 柄谷氏のこの本の論では、フロイトの超自我に依り「憲法九条が日本人の集団的な超自我であり、『文化』」としていて、徳川時代や第一次大戦後の歴史を辿り「外部の力による戦争(攻撃性)の断念があり、それが良心(超自我)を生みだした」という日本人の無意識に定着した過程を説いている。いや、あのですね、一つ一つの闘い、ジャーナリズムの健闘、体験の尊重こそとも俺は思うけれど、九条論議のテキストに絶好だ。






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