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評者◆ベイベー関根
人にやさしく。
探さないでください
中川学
No.3294 ・ 2017年03月11日




■いやあ、谷口ジローさんの訃報には驚いたなあ。前回の原稿掲載直後だったもんね。心より冥福をお祈りいたします(何のこと? と思う読者の方にご説明すると、前回谷口ジローさんの『ヴェネツィア』を取り上げたのです)。
 実は前回、ひらのりょう『FANTASTIC WORLD』と長新太『これが好きなのよ』を取り上げようと思っていたんだけど、なんとなく後回しにしといて、ギリセーフ! まあ、『ヴェネツィア』の後にこの2冊だとつきすぎな感じもするんで、もうやらないけどね。2冊合わせて、5780円+税もしたけどな!
 さて、それらと全然違う今回の本は、中川学『探さないでください』だ!
 映画化もされた『くも漫。』でおなじみ、かつ「情けない男」である自分を赤裸々に明かしてみせることでは右に出るものなしの中川学、今回も期待にたがわずやってくれるぜ! 『くも漫。』は、作者がくも膜下出血をこともあろうにソープで発症した事実がネタになっていたが、今回はなんと過去に失踪していた事実が明らかになる。うわー!やらかしたねー!
 逃げたくなる人いろいろあれど、中川さんの場合はどうだったのか。デモシカ先生(死語? 「先生でもやるか」「先生しかなる職がない」みたいな動機でなった先生のこと)ノリで網走の中学の数学の先生になってみたら、生徒はいうこと聞いてくんない、周りからは仕事を山のように押しつけられる&911の衝撃ですっかりやんなっちゃった、ということらしい。「メンタル弱!」というのはたやすいが、いやあ、なかなか大変だと思うぜ~。
 頭の中がとっちらかった(家の中も……。これ、超わかる!)中川さん、数日欠勤して、あてもなくあっち行ったりこっち行ったり、東京の弟のところを図々しく訪ねてみたり、映画青年の血が騒いで尾道に行ってみたり。最後には、死のうと思いつめたりもするが、なんとか生還(ネタバレにはならないよね、今マンガ描いてるんだから)。
 絵はごらんの通りの、大丈夫かな系だけど、映画を目指していた時期もあっただけに、どう見せるかとか、どう構成するかとかはかなり巧みなんだよねー。見どころは、逃げ人生のきっかけになった中学校の先生の暑苦しさ(でもいた、こういう人!)と、失踪をキメた後の、真綿で首を絞めるようにまとわりつく不安の描写かな。
 著者の場合は、周りの人が暖かく受け止めてくれて、なんとか社会復帰できた(のか?)けど、あとがきで「私はなぜ人の優しさを予想できなかったのでしょうか?」と自問する。答えは、「それは自分が人に厳しかったからです」。
 正直、これが一番グッときたね。みんなもハッとしたんじゃない? そして、それが今社会の首を絞めようとしているんだぜ!
 以下蛇足だけど、映画版『くも漫。』サイトに載っている中川さんのお母さんのコメントが超笑えて超泣けるので、要チェック!







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