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評者◆殿島三紀
言いたい放題いっても最後は笑える  監督・脚本フィリップ・ドゥ・ショーヴロン『最高の花婿』
No.3248 ・ 2016年03月26日




■『もしも建物が話せたら』『偉大なるマルグリット』『アイリス・アプフェル』を観た。
 『もしも建物が話せたら』。世界の名監督6人が描いた6つの建物の話。製作総指揮はヴィム・ヴェンダース監督である。ヴィム・ヴェンダース、ミハエル・グラウガー、マイケル・マドセン、ロバート・レッドフォード、マルグレート・オリン、カリム・アイノズという監督たちが、その心の内で大きな存在感を占めるそれぞれの建物に思いの丈を語らせるというちょっと変わったオムニバス・ドキュメンタリー映画。ヴィム・ヴェンダースはベルリン・フィルの建物に、『100000年後の安全』のマイケル・マドセンは受刑者に対して世界一人道的だというノルウェーのハルデン刑務所に語らせている。各棟各様の話が興味深い。
 『偉大なるマルグリット』。グザヴィエ・ジャノリ監督作品。稀代の音痴でありながらカーネギーホールの舞台に立ち、レコードまで発売したという女性の歌を偶然ラジオで聴いた監督。その声に魅了されて(?)撮った映画である。狂騒の時代といわれた100年前のパリが舞台。すさまじく音程の外れた「夜の女王のアリア」に吹き出し、とんでもないコメディかと思い込まされた観客が連れていかれるその先は……。
 『アイリス・アプフェル』。多くの有名デザイナーに尊敬され、今もニューヨークのカルチャーシーンに影響を与える94歳のアイリス・アプフェル。50年代からインテリアデザイナーとして活躍。夫と設立したテキスタイル会社が大成功し、ジャクリーン・ケネディや歴代大統領からホワイトハウスの装飾を任された女性である。ジャクリーンとはひと悶着あったそうだ。彼女の人気を不動のものにしたのは2005年、84歳のとき、彼女が収集したファッションやアクセサリーの展覧会がメトロポリタン美術館で開催されたときのこと。鶏卵ほどもある大きな玉のネックレスやブレスレットを二重三重に巻き付け、その装いはかなり人目を引く。だが、少しも下品ではない。お手本にしたいほどクレバーでお洒落な女性なのだ。監督は昨年88歳で亡くなったアルバート・メイズルス。
 そして、今回紹介するのは『最高の花婿』。4人の娘を持つフランス・ロワール地方に暮らす夫婦が主人公である。3人の娘たちがアラブ人、ユダヤ人、中国人と結婚し、宗教も生活習慣も違う婿たちとの交際には気疲れすることばかり。そして、この子だけはカトリック教徒と結婚してほしいと願っていた末娘までも……というフランスで大ヒットした映画。監督・脚本はフィリップ・ドゥ・ショーヴロン。本作でリュミエール賞のオリジナル脚本賞を受賞した。
 フランス人も案外人情ものが好きなんだ、と納得はしたが、国際性に欠けた日本人である悲しさ。アラブ人婿とユダヤ人婿の区別がつかない。どう見てもアラブ人としか思えない濃い顔の婿がその大きな鼻ゆえにユダヤ人だというし、ユダヤ人だと思いこんでいた婿がアラブ人なのだそうだ。これって日本人的偏見か? そんな細かいことにこだわってしまうのは娘たちの結婚に理解を示しながら内心穏やかでない主人公夫婦の心情を「ある、ある」とわかってしまう自分がいるから。
 フランスでは外国人と親戚になることは身近な出来事。統計によれば、人種間混合結婚率は世界一で、20%近くが異なった民族・人種・宗教間での結婚という数字が出ているそうだ。そんなフランスだからこそ、難民問題で揺れながらもこうした結婚をコメディとして笑い飛ばせる大らかさを持っていられるのか。4人娘の親としては、一度くらい自分たちの伝統に則った結婚式を挙げたかっただろう。っていうか、女目線で見れば、どうしていつも婿側の習慣に従わなくてはならないの?
(フリーライター)






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