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評者◆殿島三紀
神の視点を持った写真家  監督ヴィム・ヴェンダース、ジュリアーノ・リベイロ・サルガド『セバスチャン・サルガド
No.3218 ・ 2015年08月08日




■地球へのラブレター』『共犯』『ジュラシック・ワールド』『さよなら、人類』『セバスチャン・サルガド~地球へのラブレター』などを観た。
 『共犯』。実在の盲目のピアニストを描いた映画『光にふれる』(2012年)で台湾金馬奨新人監督賞を受賞したチャン・ロンジー監督の第2作。女子高生の変死体を偶然同時に発見した3人の男子高校生を通じて現代の高校生の抱える孤独、絶望を活写した学園ミステリー。
 『ジュラシック・ワールド』。ご存知『ジュラシック・パーク』の第4弾である。製作総指揮スティーヴン・スピルバーグ。監督は新人コリン・トレボロウ。琥珀に封じ込められたDNAを使って恐竜が生まれたのが第1作。その後、回を重ねるごとに強く巨大な肉食竜を生み出してきたが、本作では最大最強最高知性のハイブリッド恐竜、インドミナス・レックスが登場。多くの人間が恐竜に殺され、主人公だけは生き残るというお約束の展開だが、おなじみの作品特有の安心できるハラハラ感はある。
 『さよなら、人類』。ロイ・アンダーソン監督。スウェーデンが生んだ映画界・CF界の巨匠だ。第71回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作品。面白グッズのセールスマン・コンビが目撃する様々な人生。それをつながっていそうでつながっていない(逆もいえる)短編で構成した映画。笑いあり、風刺あり、薄気味悪さあり。本作にグランプリを授与したヴェネチア映画祭はなんとも懐の広い映画祭だ。
 そして今回紹介するのは『セバスチャン・サルガド~地球へのラブレター』。ヴィム・ヴェンダースとジュリアーノ・リベイロ・サルガド監督作品である。前者は今更紹介するまでもないドイツの巨匠。『Pina/ピナ・バウシュ踊り続けるいのち』(2011年)に続く最新ドキュメンタリーを送りだした。ジュリアーノ・リベイロ・サルガドはセバスチャン・サルガドの長男で41歳。ドキュメンタリー映画を多く撮っている。父セバスチャンはユージン・スミス賞はじめ40年にわたり50以上の報道写真賞を受けた報道写真家であり、生地ブラジルのジャングルの保全や復元に邁進する環境活動家としても知られている。だが、彼については一万言を弄するよりもその作品を観れば一目瞭然。
 なぜ本作が誕生に至ったかはヴィム・ヴェンダースが出会った1枚の写真がきっかけだった。アフリカ難民の盲目の女性を写したものだ。恐らくはそれほど年老いてはいないのだが、眉間には深い皺が刻まれ、見えない目で何ものかを凝視する。心をざわつかせるような写真である。その写真に感銘を受け、自身も写真家であるヴィムは彼の写真展「人間の大地 労働」を観に行き、ファンになってしまったのだという。
 サルガドは被写体に何ヶ月も密着して撮影する。共に暮らす中から生まれる画像には被写体の苦悩も痛みも滲む。同時に撮影者にもそれは伝わり、撮影そのものも苦痛に満たされよう。
 ヴィム・ヴェンダースはジュリアーノ・リベイロ・サルガドの協力を得て、この稀有な写真家の生涯最後の壮大なプロジェクト「GENESIS」の全貌を追う。天地創造を思わせる荘厳な画像は神の視線である。その咆哮や息遣い、臭いまで感じられる海獣やペンギンの群れ。その円い瞳に映り込んだサルガドの姿を見て初めてこれが写真であることがわかる。荒々しい南極大陸。
 難民の悲劇、貧困、労働。映画はサルガドの作品を見せながら、故郷のジャングルを復元させるサルガド夫婦の現在の姿やこれまでの人生も描き出す。しかし、なんといってもサルガドの作品群のすばらしさ。その構図、視座。まさにGENESIS=創世記である。オリジナルタイトルは「地の塩」。この写真家は神の視線と神の手を持っている。ヴィム・ヴェンダースは素晴らしい素材に出会った。
(フリーライター)

※『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』は、8月1日(土)より、Bunkamuraル・シネマ他にて全国ロードショー。








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