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評者◆井口時男
「毒虫ザムザ」として書くこと/語ること──恩寵に抗って現代の作者たらんとした作家、中上健次
中上健次集7 千年の愉楽、奇蹟
中上健次
No.3102 ・ 2013年03月16日




 定型の恩寵はいつも呪縛に似ている。あるいは呪縛は恩寵に似ている。
 五七五という定型がある。芭蕉は凡兆に「一世のうち秀逸三五あらん人は作者、十句に及ぶ人は名人也」と語ったというが、それなら俳句の世界は死屍累々たる駄句凡句の山だろう。実際それは、句集と称する書物を開きさえすれば一目瞭然のことだ。だが、定型の恩寵を信じ切っている限りにおいて、この死屍どもは一様にあられもない恍惚の表情を浮かべて死んでいる。この痴呆的な死に抗うことなしに現代の俳句作者たることはできまい。しかしそれは恩寵を失うことである。
 たとえば私は現代の俳句作者たる金子兜太の数句に感嘆を惜しまないが、兜太の累々たる死屍どもは、恍惚にいっさい与かることなく、まったく無様に死んでいる。しかし、この失寵の死によらなければ現代の作者である証が立たない。それが俳句という定型の世界のようだ。
 物語もまた定型である。その圧倒的な長さによって定型であることを粉飾された定型である。五七五の定型は子供も自覚するが、物語という粉飾された定型の世界では、読者も無自覚なら作者も無自覚であり続けることができる。ここでは、いつまでも希薄な欺瞞が蔓延し、希薄な恩寵が生き延びる。
 誰よりも深く物語に身を浸し、その恩寵を飽くまで貪り、それゆ...







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