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評者◆秋竜山
作品名より向田邦子、の巻
No.3027 ・ 2011年08月27日




 向田邦子っていいねぇ!! と、いう。向田邦子って、作品もよく知らないが、いいねぇ、という。私の知っている限りの人では、皆、向田邦子っていいねぇ、というのである。無責任のように、いいねぇ、というのである。私も、そうだ。私の場合は、「なんだか知らないけど、向田邦子っていいなァ!!」と、いう口である。なぜ、に向田さんは、人気があるのだろうか。悪口など一度も耳にしたことない。私は、なんだか、知らないけどという向田ファンであること、って、なんだろうと考えてみると。なんとなくわかったことは、向田さんの顔写真からくるムードにあるのではないかと思えてくるのだ。顔が一番、作品が二番ということである。あんまりいいファンではないかもしれない。
 文藝春秋編『向田邦子ふたたび〈新装版〉』(文春文庫、本体六八六円)では、〈没後30年記念刊行第二弾 新装版〉と、いうわけ。〈向田邦子の全魅力 秘蔵写真100点以上でよみがえる、その素顔〉(オビ)。ビックリしたのは、「エエッ!! 没後30年になるのか」。つい、このあいだのような気もするが、30年とは。生まれた子供が30歳になってしまうほど、時間というものが、なにがなんだかサッパリわからなくなってしまう。NHKドラマで原作「胡桃の部屋」がスタートした。そして、なんと、30歳の女性が、なんといったかというと、「向田邦子のビデオをとらなくちゃァ」。「胡桃の部屋」という題名をいわずに、「向田邦子」である。向田ファンだという。向田ファンとしては、一つ一つ作品の題名なんかよりも、向田邦子ですませてしまうのだ。これはすごいと思った。と、いうことは、〈向田邦子作品1〉であり〈向田邦子作品2〉というように、作品3、作品4、と番号づけでよいのである。たとえば「隣りの女」なんてのも、〈向田邦子作品5〉でいいわけだ。作家によっては、作品名はよく知られているが、その作者が誰であるのかわからない、というのもある。私の向田ファンというのは、果たしてこれが正しいファンであるかどうかは知らないが、有名なテレビ・ドラマの作者であったのは、後のほうで知ったのであった。「あれも、あれもそーだったのか」と、いった具合であった。これも、ファンとしては申しわけないが、向田さんは作者というより、女優になって、女優向田邦子になってほしかった。当時の向田さんの活躍をみていると、向田邦子さんが向田邦子さんを演じているようにも思えたものであった。本書は、みごとというほど、ゼータクな内容である。
 〈向田邦子は戦友だった……山口瞳〉〈旅の断章……澤地久枝〉〈名人……山本夏彦〉その他。〈レキエム エ オマージュ〉では、〈吉行淳之介、井上一夫、綱淵謙錠、野坂昭如、中川一政、桐島祥子、他。〉
 〈「思い出というものはねずみ花火のようなもの」だと向田さんは書きました。向田さんの書斎には、海外旅行のトランクにいっぱいの写真が、遊んだあとのトランクのように未整理のまま残されていました。〉
 その中から30枚選んだ写真。それを眺めているだけで本書の価値あり、といったところか。……なんて、手ぬぐいで汗をふきふき。それにしても、今年の夏の暑さは、なんだ。







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