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評者◆小嵐九八郎
信仰、理想、信条と現実の深く悲しい谷――大東仁著『大逆の僧 高木顕明の真実』(風媒社、本体一五〇〇円)
No.3018 ・ 2011年06月18日




 去年二〇一〇年は、大逆事件から一〇〇年だった。三人ほど爆弾を実際に作った勇気のある人間はいた。でも他は、日本から危険思想を一掃するための、国家が仕掛けた凄まじい捏造事件であるのは御存知の通り。
 誰でも、ひょんなことで逮捕されたり、その気がなくてもパクられたりするのは有り得るわけで、ゆえに、俺は救援センターの発行する『救援』は、毎月、どの新聞や雑誌よりもきっちり、情を持ち、読んでいる(購読料は年間4500円(開封)、TEL03-3591-1301)。刑事裁判の日本全国の情報ばかりか、死刑制度の今、獄中での扱われ方などが生生しく分かる。法律家志願者、ジャーナリスト、新聞人には隠れた必須の情報源ともなっている。
 その『救援』では、亀田博さんという人が「大逆事件の救援史』というのを三年以上連載している。国家と、集団とはいえないけれど流れ、特に個人について実に厳密に調べ、熱が溢れている。出版社のみなさんは、こういうのを本にして、たまには、流行り狙いとか儲けを一旦棚に置いて、出した方がよろしいような。
 あ、大逆事件では、僧侶三人も逮捕されている。一人が高木顕明。浄土真宗大谷派の住職であった。当方は、阿弥陀如来に“出世”する前の法蔵菩薩の「設い我、仏を得たらんに、国に、地獄・餓鬼・畜生あらば、正覚を取らじ」の言を根の一つにして、悪人正機説をも含む親鸞思想に、イエスへの思いより大きく関心がいっている。なのに、死刑から無期へと減刑になった高木顕明が、なにゆえ、秋田監獄で自殺するしかなかったのか。ヒリヒリする、信仰、理想、信条と現実の深く悲しい谷の感情を抱いてしまう。謎とはいえ……。
 このことを静かに、同じ浄土真宗大谷派の僧侶であっても厳しく、クールに、しかし、読後に、この冷静さによって吐息をつくしかないノンフィクションが出た。『大逆の僧 高木顕明の真実』(大東仁著、風媒社、本体1500円)である。せつないですなあ。
(作家・歌人)







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