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評者◆伊達政保
なに! キーワードは「自分探し」――鈴木英生著『新左翼とロスジェネ』
No.2925 ・ 2009年07月11日




 貧困、派遣切り、「蟹工船」ブームといった時代状況の中で、ロスト・ジェネレーションでもあるジャーナリストが、求められている社会での連帯へのきっかけとなるものを提示するとして、新左翼運動を捉え直す本が出た。『新左翼とロスジェネ』鈴木英生著(集英社新書)である。これまでの同類書とは異なり、著者も断っている様に、新左翼理論史でもなければ通史でもない。「運動とその周辺を描いた広い意味での文学(評論や手記、回想記、声明などを含む)」を紹介して「物語」を紡ごうとしている。そしてそのキーワードとなるものは「自分探し」だという。
 なに! 現在流布するその言葉の概念の軟弱性に、オイラ一瞬カチンと来てしまったが、言い換えれば今の自分自身が「何を為すべきか」という問い掛けでもあり、たしかにそうした意思が新左翼に流れ込み、運動を活性化させたことは間違いない。例えば昭和42年「平凡パンチ」に連載されたデビュー当初の五木寛之の『青年は荒野をめざす』は、今から考えれば「自分探し」の旅の「物語」であり、昭和44年にヒットした『昭和ブルース』は「何もせずに生き、死んでゆくのは、たやすいことだが、それが自分にはつらいので、だれも探しに行かないものを自分は求めていく」という感情を切々と歌い上げている。つまりそうした意識や感情が、あの時代の多くの若者の心を捉えていたのだ。同時代を生きてきたオイラが言うのだから、これまた間違いないのだ。
 さて本書は新左翼運動の成立から消滅までを、著者の言う「文学」を梃子として誠実にまとめている。全共闘運動が消滅しても、そこにかかわった多くの人々が、労働運動、住民運動、反差別運動などの多くの分野の運動に携わっていったこともその通りである。ただ「全共闘は、ロックや映画、演劇などと共に六〇年代末のカウンターカルチャーの一翼を担うような位置にもいた。」(ジャズもあるでよ)と正当に指摘しながらも、周辺の「文学」にそれらを加えて「物語」を紡がなかったことにより、文化領域を排除して政治主義的側面が強調されてしまったような気がするのだ。
 新左翼学生運動の「自分探し」→「連帯」を今の青年層の「貧困」+「自分探し」と繋げることにより、「貧困」+「自分探し」→「連帯」とするという著者の結論は、新たな共同性の獲得という側面において、かつての全共闘がそうであったように文化領域が重要性を占めると思うのだ。ただ一挙に新たな共同性と連帯を獲得する手段も無いわけではない。ヨーロッパの青年層が繰り返す「暴動」である。それを言うオイラの方が政治主義的か。
(評論家)






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