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評者◆生野毅
空飛ぶ俳人・夏石番矢──夏石番矢『空飛ぶ法王 Flying Pope』(Cyberwit.net刊)
No.2878 ・ 2008年07月19日




 後に『2001年宇宙の旅』で一世を風靡することになるスタンリー・キューブリックの初期の短編映画『空飛ぶ牧師』“Flying Padre”は、しかしSFやファンタジーではなく、400平方マイルもの教区を自ら軽飛行機で日々廻るニューメキシコの牧師を撮ったドキュメンタリーだという。先般夏石番矢氏より『空飛ぶ法王 Flying Pope』(India.Cyberwit.net刊、英訳・夏石番矢/ジム・ケイシャン)という日本語の一二七句とその英訳を収めた句集が送られてきた時、私はふと前述の未見の映画のタイトルを思い出した。牧師と法王、いずれも現世における職務や権能がそのまま他界や超越性へと通じている存在である。
 それ故「空飛ぶ」とは、具体的な「飛行」を意味するのみならず、彼らの〈存在〉そのものを喚起する言葉とも言えまいか。
 いつもいまごろ虚空の一 人を見放せり(『猟常記』)
 「飛翔の意志に始まって、曇天より降下する死の印象で終わる。」(四方田犬彦)と評された、神話的時空と現在の攪拌が衝撃的だった処女句集『猟常記』以降、夏石番矢は多くの句集、評論集を世に問い、一方で「世界俳句」「地球詠」の理念の下に国内のみならず海外でも数多くの詩祭や俳句の会を推進してきた。「世界俳句協会」を創立、主導し、今年の「東京ポエトリーフェスティバル2008」のディレクターを務める等、驚嘆すべき肺活量で活動を展開してきた夏石氏自身が「空飛ぶ俳人」と呼びうるのだが、若き天才として「飛翔」して行った実作者としての姿と共に、我が国の俳句界の閉鎖性からの真摯な逸脱者としての氏の〈存在〉を、私たちは自らの俳句の実践において今後より強く想起すべきだろう。
 いみじくも海外出版の『空飛ぶ法王』には、世界への「飛翔の意志」から俳句が「世界」そのものへと移行してゆこうとする過程が「法王」の孤独と普遍として、時に諧謔やイロニーも交えつつ浮き彫りにされていて興味深い。
 飛ぶ法王飛ぶキリストに ついに遭わず
 欠陥潜むWindowsの空飛 ぶ法王
 虹消えて空飛ぶ法王迷子 かも








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