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文学
13の理由
書籍・作品名 : 13の理由
著者・制作者名 : ジェイ・アッシャー  
ひととせ   18才   女性  





「これから、私の人生について話します。もっと正確に言うと、どうして人生が終わったのかと言う話。私が死んだ理由。このテープを聞いているあなたは、その理由のひとつです。」(『13の理由』)
物語のはじまりは、高校生のクレイ・ジェンセンのもとに届いた7本のカセットテープ。テープに録音されていたのは2週間前に自殺したクラスメイト、ハンナ・ベイカーの声だった。そこには彼女が自殺に至った「13の理由」が録音されていた。テープを聞き進めていくなかで、ハンナやクラスメイトたちに関する衝撃の真実が徐々に明かされていく。クレイは、自分とクラスメイトが何をしてしまったのか、あるいは「何をしなかったのか」を知ることになる。カセットテープは、カセット1から7までのそれぞれA面とB面に録音されている。ひとつの面が、ひとりの人物に宛てられており、その人物との間に起こった出来事について語られる形で進んでいく。 13個の理由のなかには、人気者の裏の顔や誤解などの秘密があり、それらにいじめ、噂、誤解、人間関係、性的暴力などが重なっていく。このような多くの要因によって彼女は徐々に追い詰められる。テープの声を聞いて、自殺に至る直前のハンナの追体験をするクレイ。過去を語るハンナと現在を生きるクレイの二つの視点が重なり、隠された事実が繋がっていく。
 本書は、デジタル世代にとって身近なスマートフォンやSNSなどによって、それらが生み出すいじめや噂が人を追い込む恐ろしさをテーマに、「ソーシャル・チェーン・ミステリー」という全く新しいジャンルとして定義されている。ハンナの語る13の理由は全てが繋がっており、7本のカセットテープはリストに載っている13人にチェーンメールのように回される。しかし、このミステリーにおいて彼女を死に追い詰めた犯人は誰なのかは重要ではない。ある出来事によって彼女が何を考え、どう感じたのか、そして彼女をどのように追い詰めたのかというところが注目すべき点である。また、本書は、クレイとハンナの感情に関する描写が多く、感情移入しやすくなっており、共感できる部分も多い。ハンナの口から語られるすべての言葉は人の心を強く動かすパワーを持っていた。真実を知ることにより世界の見方が変わり、自分の行動を後悔する姿は決して他人事とは思えず、自分と重ねて見てしまう。
 この物語で重要なポイントは、ハンナが自殺に至った理由を録音するために使った7本のカセットテープである。なぜカセットテープである必要があったのか?時代遅れでアナログなカセットテープを選んだことには、ハンナの強いメッセージが込められている。まず、カセットはハンナのSNSに対する反発の象徴である。ハンナの13の理由のひとつにSNS上での嫌がらせがある。SNSの中の不用意な発言やいじめは一瞬のうちに広範囲に拡散していく。そのことに被害者が気付く頃には、既に情報は蔓延し、取り返しがつかなくなっている。自身の経験したSNSを使ったいじめへの嫌悪や反発の気持ちがカセットを選んだ理由のひとつだろう。また、カセットテープを使ったことのある人なら共感してもらえるだろうが、カセットテープは特有の音質を持っている。例えば、テープが裏返るときのカチッという音、再生するとテープと軸が擦れて鳴る音や背景で流れる微かなノイズ。このような音が、カセットを再生するたびに表現されており、本の内容によりいっそう深い魅力を与えている。
 本書では、アメリカだけではなく、世界中のティーンエイジャーが抱える秘密や問題が繊細に描かれており、私たち若者に新たな視点から倫理的な議題を突きつける。日本でこそ多くの人に読まれ、本作のテーマについて真摯に受け止め、語られるべき作品である。また、本作のテーマである「いじめ」「性暴力」「自殺」「人間関係」  そしてそれ以上に、自分にとっては些細な言動が気付かないうちに人に大きな影響を与えているということ。反対に、何気ない気遣いや思いやりが人を救えるかもしれないということを本書は訴える。小さな悪意が少しずつ、確実に広がっていき、思いがけない誰かに予想もつかない影響を与えていくことの恐ろしさを改めて感じた。『13の理由』はフィクションであるが、単なるフィクションとしては終わらない。誰もが抱える秘密や苦悩、葛藤などの「リアル」を描いているのである。






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