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映画
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映画『アバター』と原始
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書籍・作品名 : 映画『アバター』
著者・制作者名 : ジェームズ・キャメロン
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山の神
58才
男性
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J・Gフレーザー、著書名である樹木信仰を、原始の思考がアニミズムの霊的存在から具体的な人間の王の姿まで変わるまでを象徴的に物語っている。ジェームス・キャメロンの映画『アバター』は、この原始的な思考をフレーザーと同じ目線でたどっているのはまちがいない。しかし、その目線はフレーザーのような静かなそれでなく、ヘリコプターの轟音を響かせて、いまや過去になりつつあるベトナム戦争の惨禍をおもいださせるかのような色どりを与えている。
この地球から鉱物資源を求めてやってきた人間たちのベトナムはパンドラ星と呼ばれた。そこでは、先住民ナヴィたちが、原始人の狩猟生活を髣髴とさせるように、ジャングルの中で森の精と一体となって暮らしていた。そこにやってきたのは、先住民を野蛮人と呼び、わが物顔にみずからの利益を主張するひとびととその傭兵、そして、融和を求めようとする一部の科学者たちだ。
主人公の元海兵隊員ジェイクは、兄にかわって先住民の情報をえる目的で、人間の脳、からだを先住民にするアバターと呼ばれる合成人間になるためにこの星にやってきた。原始林にさ迷い、おりよく部族の酋長の娘に助けられ、部族の一員として迎えられる。それからは彼ら部族の地球とちがった自然にたいする感情や知識を溶け込むように学んでいく。森と生命と人間が混然一体となって、魂の木と呼ばれるエイワ神を中心に拡げられていく世界に、ジェイクは次第に心奪われ、魅了されていく。やがて、彼は現実とアバターの世界が逆転して、アバターの世界こそほんとうの自分があるとおもうようになってゆく。
そして酋長の娘と結ばれた彼は、正式な部族員として認められようとすると、それを察知した軍隊は、彼らの森の住居に攻撃をしかけてくる。巨大なブルド―ザ―が木をなぎ倒し、ベトナムのナパーム弾が森を焼き払い、先住民は避難する間もなく一人残らず殺されようとする。これに対して、ジェイクは彼ら部族の先祖の霊の化身、トルークという巨大な鳥にまたがり、すべての部族を結集し、彼らのいう敵、人間=スカイピープルに戦いを挑む。
おそらく、この決戦の主な魅力は、魂の木へのヘリコプターの攻撃と、それにたいする先住民の反撃の空中戦が、3D映像をとおして繰り広げられる箇所である。わたしたちは、巨大な鳥になったような気分になり、下界をながめ、あたかも、先住民が崇める神の目線から俯瞰したような映像美に引きつけられる。一方の地上戦には魅力が乏しいが、この空中の戦いは先住民の究極のあこがれが込められているとさえみえる。
ジェイクの妻が言った言葉で印象的だったのは、「神はどちらにも味方しない」というキャメロン監督がこの映画を作ろうとした動機におもえる言葉だ。かつてのベトナム戦争や現在のイラク戦争は、「正義」と「自由」をわが物にする双方の戦いであるが、視点をかえれば、ほんとうはそんな「義」などは、なにほども意味しない。自然神の遠近法から見れば、その姿は作り上げられた自然と人間の戦いにすぎない。それが、この映画にインディアンの虐殺物語とちがう魅力をつくり出しているとおもえる。
結局、勝利したのは、先住民だった。というより、アバターが魂の木の助けを借りて、勝利した。つまり、キャメロンは、脳科学の粋をつくして作りだした先住民と人間の合成人間というアバターをとおしてしか、原始を再現できなかったことになる。わたしにはこれは、現代から過去を見る常套手段だとおもえる。わたしたちは、おそらく、先住民の悲しみや涙を現代の押し込められた圧迫感として二重写しにみているにちがいない。
いつだったか、『プリティ・ウーマン』のジュリア・ロバーツが、ボランティアでモンゴルの草原に住む遊牧民の家族にお土産をもって訪れ、親しげに溶け込もうとするドキュメンタリーをみたことある。そのとき、ジュニア・ロバーツに悪意があったとはおもえない。だが、彼女は、そのとき、モンゴルの子供にアメリカの童謡をおしえようとしてしまった。自らモンゴルの子供たちの言葉を知ろうとする前に、英語の歌詞をおしつけてしまった。
このドキュメンタリーはおせっかいな失敗だったにちがいない。このようなアメリカ人の失敗の繰り返しが、この映画に影響しているのかどうか分からないが、せっかく、魂の木までたどりついたのに、フレーザーと同様、現在から過去をみるのでなく、未来から過去をみることができない限界を写しているような気がしてならない。しかし、わたしたちのだれもが同じようなところに佇んでいる。
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