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文学
流れ星から見る人生
書籍・作品名 : 流星ワゴン
著者・制作者名 : 重松清  
さよよ   19才   女性  





心を閉ざしてしまった一人息子、かつて憎んでいた父親に迫る死、我が家から心の離れてしまった妻、リストラ…。そんな最悪の現実に失望し、死んでしまいたいと思う主人公の僕、永田一雄。僕は五年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われ、人生の岐路になったたいせつな場所へ旅する。そして自分と同じ歳の父親に出会う。

作者の重松清は1963年岡山県生まれ。代表作に「ナイフ」、「エイジ」、「ビタミンF」などがある。現代の私たちの日常を切り取った作品が多く、登場人物を身近に感じることができ、感情移入しやすい。本書もそんな作品の一つで、世の中の父親だけでなく、一度は辛い現実に直面し挫折しそうになる私たち読者に現実を生きる力を与えてくれる一冊だ。

本書の注目すべき点は、重層的に描かれた、僕とその父、僕とその息子、そして橋本さん父子という三組の父子の関係だ。僕は過去からきた同じ歳の父親に“父親”としての自分を重ね、自分の息子である広樹に子どもの頃の自分を重ねる。また、橋本さん父子にも自分たち父子を重ねて見る。そうすることでこれまで見えていなかった父親の感情や息子の感情が見え始め、自分自身だけでなく、一人の人間として自分の父親や息子自身をも見つめ直していく。
「カズはわしの息子じゃ!」
そう怒鳴り、涙ぐむ、かつて憎んでいた父親を目にし、「お父ちゃんはカズのこと、ほんまにかわいがってくれとったんよ。」という母の言葉を僕は思い出す。そして自分は大切にしてきたつもりの息子のためにここまでしたことがあっただろうかと思う。この重層的な世界は登場人物の感情を父親と息子両方の視点から見せていて、息子寄りの読者も父親の愛を感じることができる。「親の心、子知らず」というが、この作品ではこの諺を痛感する。また、父親よりの読者にも子どもの頃の父親に対する感情を思い出させるのではないか。

さて、この「流星ワゴン」という題名だが、橋本さんの言葉が印象的だ。
「同じ星空でも、星座を知ってるひとと知らないひととでは、ぜんぜん見え方が違うんだろうなあ、って。ふつうに眺めてるときには、ただばらばらに散らばってるだけの星だったのに、つなげ方を知ると、確かにこの星とあの星がつながって、こんな形になってるんだとわかるんですよ。」「ひとの人生も同じだと思うんですよ。」
人生の岐路になったたいせつな場所。たとえ現実を変えることはできなくても、それを知っているのと知らないのとでは、人生の見方やこれからの生き方は違ってくるのではないか。流れ星のように人生の分かれ道を駆け抜ける橋本さん父子のワゴン。星をつなげて星座を見るように、父子の関係を通して人生の岐路になったたいせつな場所をつなげ、未来を変える力を手に入れることのできる一冊である。






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