|
文学
|
|
ヒーローは裏切らないし、いつも君のポケットにいる
|
|
書籍・作品名 : ポケットに名言を
著者・制作者名 : 寺山修司
|
|
mick
22才
女性
|

|
一生に人が出会えるものには限りがある。人との出会いも勿論だが、優れた本との出会いもそうだろう。どうせ短い人生ならば、出来るだけ多くのものに出会いたくはないだろうか?
そんな素朴な欲求に気付いたひと、今何か悩んでいるひと、ぼんやりした不安と毎日の生活で戦っているひと、そして何より10代のひとに、お勧めしたい本がある。本書である。書店で見つけた時には、本の帯に「10代のうちに読んでおきたいこの一冊」という刺激的な言葉が並んでいた。読後、確かにもっと早いうちに出会いたかったと思わせる一冊だった。しかし、読者は10代でなくてもまったく構わない。むしろ今、気付いたその時にすぐ手に取って頂きたい。早く出会うことが出来れば出来るほど、貴方の世界は色を変えるだろう。
本書は一風変わった、型破りな名言集である。古今の文学あり、懐かしい映画のセリフあり、歌謡曲あり、かと思うとサルトル、サン=テグジュペリ、マルクスもあり……。しかめつらしく、中学生の時に覚えさせられた平家物語の文章のように、覚えたり読まされるような名言をイメージして頂く必要は、全くない。そのため名言と聞くとお堅いイメージが浮かぶという方にこそ、ぜひお勧めしたい。本書が初めて世に出たのは1968年、『青春の名言(副題・言葉を友人に持とう)』として大和書房から単行本で刊行された。その9年後に『ポケットに名言を』と改題して再発行、同じ年に角川書店で文庫化もされた、まさにポケットに軽く収まる「名言集」である。いつでも名言の数々を連れて、持ち歩ける。
登場する名言の語り手はさすがに絢爛としている。『幸福論』のアランに、ドストエフスキー、ヘンリー・ミラー、カフカ、レイモン・ラディゲ、レオン・トロツキー、織田信長、魯迅、三島由紀夫、ジェームス・ディーン……。作家が多いのは、まあ当然であろう。作家案内、文学案内的な趣もある一冊である。ここまでの名言の語り手のラインナップを見るだけでも、冒頭で述べたように“多くのものと出会える”ことが伝わるだろう。一冊の薄さに対して中身のボリュームは、反比例している。
さらに文学案内的な趣を感じて読んでいると、著者はあっけらかんと言うのである。
「思想家の軌跡などを一切無視して、一句だけ取り出して、ガムでも噛むように「名言」だけを噛みしめる」と。「名言」とは受け手のなかでひとり歩きするものなのだ。
「ピンク・レディの唄でも口ずさむようにカール・マルクスの一句を口に」する著者は、文庫化以前に本書の単行本版に収録していた名言をいくつか入れ替えている。「名言」などは、軽く着こなしては脱ぎ捨ててゆく、と考えているからだ。
しかし、そんな人物があえて名言を一冊に編んだのはなぜだろうか。そこにはやはり、言葉の力を絶対無比と信じる詩人ならではの想いが在るのである。著者は学生時代、井伏鱒二の「花に嵐のたとえもあるさ さよならだけが人生だ」という詩を口ずさむことで「クライシス・モメントを何度乗り越えたか知れやしなかった」と告白している。優れた言葉=名言は、ひとを救ってくれるのだ。
最後に……あえてここまで触れなかったが、著者は寺山修司である。大変魅力的でありなおかつミステリアスなこの人物の紹介からしてとても難しいのだが、簡単に述べることにする。
彼は青森県出身で幼少時から俳句を書きため、高校時代には俳句と詩に傾倒していた。大学を中退した後不治の病にかかり、新宿歌舞伎町をさすらいジャズに耽溺した。またボクシング評論を書き、競馬場にも足繁く通った。ラジオドラマのシナリオを書き、映画の監督になり、実験的演劇団「天井桟敷」を結成する。俳句・短歌・ラジオ・テレビ・演劇・作詞・映画・評論・競馬と多彩なジャンルで、彼は活躍した。そんな人物が選ぶ珠玉の名言の数々が、本書には溢れんばかりに揃っている。
つらいとき、何か足りないと感じるとき、ぼんやりした不安と向き合うとき、言葉を味方につけてみてはいかがだろうか。それも普通の、そこら辺に転がる陳腐な言葉ではない。ヒーローになってくれる言葉だ。名言である。しかもその言葉たちは、貴方のポケットにいつでもひっそりと潜んでいる。味方をしてくれる。
本書を開くだけで、貴方を裏切らない言葉が現れる。
ひょっとすると、貴方がまだ出会っていない、ヒーロー級に力を持った切れ味のある言葉が、そこに待っているかもしれない。足りないものは、ことばなのかもしれない。
ことばを味方につけてみてはいかがだろうか。
きっと、名言が持つ隠れたことばの力は、貴方の武器になる。
|
|
|






|
図書新聞出版 最新刊 |
|
森山大道 写真集「NORTHERN2」
|
シリーズ 六〇年代・七〇年代を検証する(1)柄谷行人 政治を語る (聞き手 小嵐九八郎) |
東大2010―東大が創る人たち、東大を創る人たち (東京大学新聞社編) |
|
|
書店別 週間ベストセラーズ (8/22~8/28) |
|
■東京■東京堂書店様調べ |
|
1位 |
呉越春秋 湖底の城 第一巻 (宮城谷昌光) |
2位 |
シューマンの指 (奥泉光) |
3位 |
活字と自活 (荻原魚雷) |
|
|
 |
| ■青森■成田本店様調べ |
|
1位 |
母 (姜尚中) |
2位 |
くじけないで (柴田トヨ) |
3位 |
終わらざる夏(上) (浅田次郎) |
|
|
|
| ■新潟■萬松堂様調べ |
|
1位 |
『教行信証』を読む (山折哲雄) |
2位 |
くじけないで (柴田トヨ) |
3位 |
伝える力 (池上彰) |
|
|
 |
|